看護師HAPPYの話

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採血を成功させるための極意を考えてみる

 看護師にとって採血業務は基本中の基本…であると思われている方も多いと思います。おおげさですが、採血の上手、下手で看護師として生きていく上でのモチベーションも変わると思います。働く部署にもよりますが、病棟、救急外来、外来の採血処置室、健診センターなどに勤務するとどうしても避けて通れない技術の一つではないでしょうか。病棟でも回復期やリハビリ病棟では採血は少ないかもしれません。

もちろん採血が苦手でも活躍できる場所はたくさんあります。

 

 しかし、採血室に閉じこもって二年間、ずっと採血しまくってきたナス子。採血が苦手でも活躍できる場はたくさんあるといいましたが、ナス子にとって採血は看護師技術の中の上位に位置しています。採血について基本的なことは、看護技術の本やマニュアルに、たくさん掲載されています。なので、私は採血をする時に、どうすれば落ち着いて採血することが出来るのか。どうすれば、苦手意識を持たずに採血ができるか考えていこうと思います。患者さん、看護師にとってお互いハッピーになるような採血はどのようにしたら良いか

難しいですが、今までの経験を元に伝えられたら。

 

目次

 1 採血は準備が大事。何の準備が大事❔

 2 重要な血管選びと物品選び

 3 当たって砕けろ!

4『ゾーン』に入るっ!!

5 まとめ

 

  1 採血は準備が大事

 採血に限らず、どんな手技にも言えますし、どんな教科書やマニュアルにも記載されていると思いますが、まず採血は準備が大切です。そんなこと当然だと思われるかもしれませんが、患者さんの所に行く前に採血する物品が揃っているか必ず確認しましょう。物品の準備が完璧だと心の準備ができます。自分は今から採血をするんだと自分の中で再確認できます。採血をする患者さんは、真空管採血ができる血管の持ち主だけではありません。血管の状態によっては、翼状針やシリンジも必要になってきますので、

慌てないためにも、予測できる準備物品は必ず揃えます。自分の中に、二重三重と網を張っておいて自分を安心させると、落ち着いて採血に望めます。

 患者さんの所に行った時に、あれがないこれがないということが発覚すると、すごく焦ってしまい、取りに行く労力が発生します。しかも看護師さんは、だいたいの人が真面目ですから、患者さんを待たせないように急いで走って取りに行きます。そうすると、心拍数が上がり冷静さを失ってしまいます。

 では、物品を忘れないためには、どうしたら良いでしょうか。

初歩的なことですが、まず採血準備物品メモが重宝すると思います。看護技術の中で基本的な採血ですから、採血に必要な物品くらい頭の中のメモで十分だと思いがちです。しかし、基本的な採血だからこそ、得意分野にしてしまえば自分の自信につながります。メモを見ながら準備すれば、物品を忘れることはありません。頭の中で何を準備するか考えるのではなく、これから採血する患者さんの様子、病名、年齢、考えられる血管の走行などを考えてみるのは、どうでしょうか。今から採血する患者さんは、採血が嫌いな患者さんで、『一回でやってよ』なんて言ってくるから、緊張をほぐすには何て声掛けしようかな。今日のおひるごはんのこと❔天気のこと❔好きな絵のこと❔病名は脱水、なら血管は、きっとつぶれているな。真空管では採血できないかもしれない。88歳、血管は見えてはいるけど脆弱で皮膚は張りがなさそう。血管に上手く当てるには。などなど。準備物品より頭の中で考えることは、たくさんありそうです。

 採血前には、頭の中で物品の準備をするよりこころの準備をしたほうが、よりうまく採血できるのではないでしょうか。

 

 2 重要な血管選びと物品の選択

 物品の準備が大事と言いましたが、実は血管に合わせた器具を使用して採血することが、より重要となってきます。この血管には、どの物品を使用することがベストか。血管に合わせた器具選びは、採血を成功させるために必要です。

 次に血管選びですが、看護師なら一番最初に肘正中皮静脈を見ると思います。

血管が太くて弾力があり、真っすぐで、真空採血も針を固定しやすく失敗がない血管です。違う血管が見えていても、駆血すると、この血管が触れることもありますから、見えている血管があっても脇見せず、まずこの血管を触ります。神経も触らない確率が高いですし出来るのなら、この血管で採血したいものです。

しかしそうはいっても、あまりにも血管が深すぎて触れないこともありますし、わかりずらい時もあります。血管選びには年齢も入れて考えなければなりません。見えている、太さもある、という場合にも、高齢者の場合、針を刺すと、サッと逃げてしまう場合もあります。また血管が脆弱で、破れてしまい、内出血だけ起こす場合もあります。

  そのため、高齢者の場合の採血として、ホルダーを使用した真空管よりも翼状針を使用することが良いと思います。翼状針を使用すれば、サッと逃げてしまった血管も角度を変えて捕まえることができます。また、見た目に太く見えている血管でも、脆弱である場合が多いので真空管採血に耐えられず、血液が引けてこないという場合もあります。翼状針でシリンジがつながっていれば、血管に負荷をかけずにゆっくりですが、引けてくることが多いです。ぎゅうぎゅう引くと、血球が壊れてしまうので気を付けてください。

 採血を一回目で失敗してしまい二回目になると、慎重にしようと思い、より緊張感が高まります。

心が落ち着いてない状態での採血は、手元も震えてしまうし、患者に気の利いた言葉をかけることが出来なくなってしまいます。採血を採ることに集中するのは、当然ですが一回目には、患者への優しい声掛けもできていたはずなのに、こわーい顔の看護師が一点だけ見つめて採血をしている姿は、本当にこわーいので、余裕を持って採血できる為にも、一回目で成功する心構えを築いていくことが大切だと考えます。

 

 3 当たって砕けろ

 技術って経験する数に左右される所があると思います。人間は同じ人はいませんから、血管の種類も星の数だけあると思います。全て制覇しろということではなく、ある程度の数を経験してくると、自分の中で血管のパターンを読むことが出来るようになってくる気がします。見えてるけど捕まえるのに苦労しそうな血管。奥の方に息を潜めている血管。針と同じくらいの細さしかないイチかバチかの血管。血管の走行が曲がっていて何処から刺せば血管に突き刺さるか計算が必要な血管。絶対大丈夫なのに患者から心配心配と言われ、やかましい血管。などなど。自分の中でパターン化してくると、あの時は、こうしたら成功した。こうしたら失敗したという風に引き出しがたくさんになってくると思います。似たようなパターンの引き出しが自然に引き出され、心も落ち着くことができるはずです。

ですので、経験したことのないような人の採血は自ら進んで経験すると、自分の引き出しが増えていくことになるのではないでしょうか。忙しくて無理!って怒られるかもしれませんが…私は難しい血管であればあるほど、『どれどれ』と言って吸い寄せられていくほうです。後輩からするとめんどくさいかもしれませんが。難しくて経験したことのないような血管は本当は誰にも渡したくありません(笑)時には、失敗するかもしれないと感じていても、当たって砕けろ精神が必要です。

 

 4 ゾーンに入る

 『ゾーン』とは、集中力が極限まで高まって、他の思考や感情、周囲の風景や音などが意識から消えて、感覚が研ぎ澄まされ、活動に完璧に没頭している特殊な意識状態です。一流のスポーツ選手は、世界レベルの試合などで『ゾーン』に入る経験をすることがあります。超集中状態でプレイすることで、圧倒的にハイレベルなパフォーマンスを発揮することが可能となります。このような、究極の集中状態はスポーツ選手に限って起こる現象ではないそうです。仕事や勉強、ダイエットなど、あらゆる場面で『ゾーン』に入ることが可能だそうです。以前は才能と考えられてましたが今では、誰でもトレーニング次第で『ゾーン』に入ることは可能だと言われているそうです。

 採血で、ゾーンに入るって、大げさなのかなとも思いましたが、ゾーンに入る=集中力を極限まで高める意識状態ということかなと思い。針を刺す一瞬って、とても集中しなければならない時間です。そう血管に針を刺す時間は、ほんの一秒程度なんですが。

 私は採血が好きなので、三年間採血室に閉じこもり、くる日も来る日も採血していましたが、不思議と苦痛ではありませんでした。経験値が上がってくると、失敗することも少なくなってきます。そうすると、採血が上手いと言われるようになります。

 

好きこそものの上手なれです。

 

 採血が上手いと言われると下手と言われるより気分よく仕事が出来ます。しかし予期せぬ事態が足音なくやってくることがあります。採血が苦手(下手…)な常連さんや新人さんに『採血三回失敗しちゃってんですが代わってもらって良いですか』と依頼されることも出てきます。そう、四回目というレベルの高い戦いに挑まなければならない日も出てくるのです。四回目の採血は、患者さんも少なからず起こり気味です。しかも、たぶんここで採れたであろう血管は、ほとんどが潰されています。最初は、『この野郎~~』て気持ちしかありませんが、慣れてくると、患者さんには謝り倒しながらも、心の中は平然とできるようになってきます。こういう状況下での採血のおかげで、私自身一番成長できたのではないかと思いますがね…。難敵であればあるほど、一秒が勝負となります。太くて弾力のある血管なら、ある程度、おおざっぱに刺してもなんてことないのですが。細くて短い弾力のない血管は、本当に集中力が必要です。準備物品が完璧で、血管選びも十分で、経験も備わった時、『ゾーン』に入ることができ、獲得することができれば、難しい血管を仕留めるための手段になるかもしれません。

 

 5 まとめ

 採血を成功させるためには、①心の準備 ②物品の準備 ③経験値 ④集中力

これらのことをバランスよく組み合わせれば、自信を持って採血できるようになるのではないでしょうか。成功してくると、採血が得意になり、好きにさえなってきます。

真面目な看護師さんなら造作も無いことです。好きになることが、極意への近道なのではないか、と考えました。

 

ありがとうございました。