看護師HAPPYの話

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分子標的薬特有の副作用が出ている患者のケアを看護師の視点から考えてみる

2018年度国内売り上げ医療薬品の第3位は、アバスチン(中外製薬)でした。

 

今日は分子標的薬について、患者さんにケアをしやすいように看護師の視点から考えてみたいと思います。

 

 1 分子標的薬とは

 2 分子標的薬の副作用、皮膚障害のメカニズムを考える

 3 副作用が出現した患者さんのケアを自分なりに考えてみる

 

 

1 分子標的薬とは

まず、従来型の抗がん薬は、殺細胞性抗がん薬です。

殺細胞性抗がん薬は、正常細胞と腫瘍細胞の区別をつけずに細胞にダメージを与えるという作用機序です。ですので、看護上、気を付けなければならない副作用も多数にわたります。もちろん、従来型の抗がん薬が、がんに対して治療効果を示しているため、治療は継続されていると思いますので、抗がん剤治療を受ける患者さんは、主治医の先生とよく相談し、副作用に対する対処を受けながら治療を続けていきます。

 

分子生物学の進歩によりがん細胞の増殖に関わる遺伝子、タンパク質が解明され、それらを標的とし働きを抑制する薬、分子標的薬や登場しました。

分子標的薬は、がん細胞に特異的に効果を発揮するように設計されているため、正常細胞に与えるダメージは最小限に抑えられます。

ところで、世界で初めて開発された分子標的薬はHER2たんぱくが発現しているHER2乳がんの転移・再発治療薬として1998年に米国で承認されたトラスツズマブです。

日本では2001年に保険承認されています。

分子標的薬の多くは、事前にバイオマーカー検査を行います。

手術や生検で採取したがんの組織を用いて、遺伝子変異や特定のたんぱくの発現の有無をしらべます。

がんは、がん遺伝子の活性化や、がん抑制遺伝子の不活性化の積み重ねによっておこる、遺伝子の病気です。こうした概念から、がんの増殖やタンパク質を抑える分子標的薬が生まれたのです。

 

実際、私が勤務する外来化学療法室では、抗がん剤(殺細胞抗がん剤)との併用療法が行われている場合がほとんどです。また、抗がん剤による副作用で抗がん剤治療が続けられなくなった場合にも、分子標的薬は3rdライン、4rdラインと続けられていきます。

 

では、本題の分子標的薬に副作用はないのでしょうか。

 

2 分子標的薬の副作用、皮膚障害のメカニズムを考える

皮膚障害は分子標的薬のEGFR系阻害薬で治療している患者さんに好発します。

製品名は、

セツキシマブ(アービタックス)・パニツムマブ(ベクティビックス)

・ゲフィチニブ(イレッサ)・エルロチニブ(タルセバ)などです。

EGFRは多くの上皮腫瘍に過剰出現していますが、正常な皮膚にも分布しており皮膚や髪、爪の分化や増殖に関与していることから、EGFRを阻害することで皮膚の新陳代謝に影響を与え、ざ瘡様皮疹、皮膚乾燥などの皮膚障害が発生すると考えられています。

 

ざ瘡様皮疹ですが、投薬後、1~2週間で発生がピークとなります。

この、ざ瘡様皮疹ですが、ざ瘡様というだけあって、憎たらしいことに顔に出現する患者さんが多いです。主治医や医療品メーカーさんは、分子標的薬は副作用が出現したほうが、治療効果が得られている場合が多いと言っています。

 

確かに、分子標的薬、特にEGFR阻害薬の場合、皮膚トラブルという分かりやすく副作用が出ますから、そういうはげまし方もあるのかなとも思います。

しかし患者さんにとったら、顔のざ瘡様皮疹は大変苦痛であると思います。

ひどい場合には、頭部にも出てきますので、出血もします。

しかし!!!一生懸命、治療を受けている患者さんの為、ここは予防ケアの重要性を理解していただきたいと思います!

 

本当にこの皮膚障害に関しては、スキンケアが重要となってきます。

 

まず、ぬるま湯で毎日入浴することを勧めます。

石鹸、シャンプー類は弱酸性のものを使用します。

紫外線による皮膚の乾燥を予防するように勧めます。

保湿剤はアルコールを含まないものを勧めます。

保湿剤は塗布する箇所に点在させ、優しく塗ります。

そしてこれらは、治療が開始される前から、患者さんに理解してもらい、実施してもらうことが大切です。

 

3 副作用が出現した患者さんのケアを自分なりに考えてみる

 皮膚障害は治療を受けている患者さんにとって本当に辛いものです。

外来化学療法室の看護師になりたての頃は、患者さんの皮膚障害に対して教科書的な伝えしか出来なかったと思います。教科書的に正しく伝えることは大事なことですが、そこに、この患者さんは、なぜ辛いのか、どうしたら副作用と向き合いながら、よりよい生活が送れるのか、この患者さんが出来ることと出来ないことは何か。考えて患者さんに伝えることがとても重要だと思います。

確かに、教科書には副作用発現時期が載っており、副作用のピーク期間は血中濃度が最高濃度になる時期であることから、必ず、その時期は過ぎていくものであります。

しかし、副作用が出ている時も、一人の患者さん。副作用に悩まされている患者さん。

一人の人間として尊重されなければならない患者さんなのではないかと思います。

 遺伝子のがんに働きかける薬が人間の体に及ぼす影響は、多大なものです。研究に研究を重ねて世に送り出されたものですから。そのため、副作用のケアを充実させ、患者さんには、なんとか副作用と付き合いながら治療を受けてもらえるよう援助するのだ看護師の役割であり、大変重要な役割だと考えています。

 

 完全に患者さん個人のことを理解したわけではありません。

日々勉強ですが、自分のことをスペシャルキーマンだと信じ、日々、患者さんと向き合っていきたいと思います。